石けんとのダイアローグ(補稿更新中)       Anri krand くらんど

4.けん化理論

4-1.油脂とけん化速度
4-2.脂肪酸組成とけん化影響要素(温度・濃度など)
4-3.水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)のスタンダード(取扱)

* 4-1.油脂とけん化速度

 油脂は脂肪酸とグリセリンとのエステル(脂肪酸グリセリンエステル)で、一般にトリグリセライド(トリ脂肪酸グリセライド)といわれるものの集合体です。したがってトリグリセライドは、脂肪酸3分子と三価アルコールであるグリセリン1分子からできています。

     H   RCOOH-C-H    RCOOH-C-H   トリグリセライド   RCOOH-C-H       H

 自然の油脂は、トリクリセライドのほか、わずかですがジグリセライドとモノグリセライド、また遊離脂肪酸をふくんでいます。ジグリセライドは3基の脂肪酸のうち1つがH基と置換したもので、脂肪酸が2基のものです。モノグリセライドは2つがH基と置換したもので、脂肪酸が1基のものです。

 ちなみにグリセライドは疎水性(親油性)をもちグリセリンは親水性のものですが、ジグリセライドとモノグリセライドは両性をもち、そのためにとくにモノグリセライドは、脂肪酸モノグリセライドとして、水と油の乳化剤(食品添加物)に多用されています。代表的な乳化剤食品添加物、グリセリン脂肪酸エステルという(製法上)合成界面活性剤も、(多種の類似成分を含有しますが)主成分はこの脂肪酸モノグリセライドです。

 以外の微量成分として、ホスファチド(リン脂質)・タンパク分解物質・ステロール・脂肪族アルコール・着色物質・抗酸化物・有臭成分・ビタミン類などをふくみますが、油脂ごとに異なり、また多くは精製の段階でのぞかれます。うちホスファチドは、多価アルコール(グリセリン)と脂肪酸およびリン酸とのエステルで、リン酸はさらに塩基性窒素含有物と結合しています。リン脂質といい、代表的なものがレシチンとケファリンです。

     H     H-C-H    RCOOH-C-H   ジグリセライド   RCOOH-C-H       H      H     H-C-H    RCOOH-C-H   モノグリセライド     H-C-H       H

 さて、油脂=トリグリセライドは、加水分解すると、3分子の脂肪酸と1分子のグリセリンを生成します。

     H   RCOOH-C-H   H2O  H-C-OH   RCOOH   RCOOH-C-H + H2O  H-C-OH + RCOOH   RCOOH-C-H   H2O  H-C-OH   RCOOH       H             

 通常、水にわずかしか溶解せず、常温・常圧ではほとんど加水分解することはありませんが、アルカリとくに苛性アルカリ(水酸化ナトリウム・水酸化カリウム)があると、容易に加水分解して脂肪酸を遊離し、ただちにアルカリと化合して、脂肪酸アルカリ塩(脂肪酸ナトリウム・脂肪酸カリウム)を生成します。
 これがけん化(鹸化)反応といわれるものです。

  RCOOH- + Na+ = RCOONa(石けん)   RCOOH- + Na+ = RCOONa(石けん)   RCOOH- + Na+ = RCOONa(石けん)

 けん化のプロセスは一概ではありませんが、水溶液下で遊離する苛性アルカリNa(K)+、OH-が触媒となり、トリグリセライドが逐次的に加水分解を起し、ジグリセライドとモノグリセライド(以上は中間体としてのみ存在)、遊離脂肪酸RCOO-を遊離し、遊離脂肪酸RCOO-が塩基イオンNa(K)+と化合して、脂肪酸アルカリ塩(石けん)が生成していくという過程をたどります。
 一連のけん化反応には3つの段階があるといわれています。

 スタート時の第1段階は、油脂とアルカリの接触面積に比例するごく緩和な反応に過ぎませんが(けん化率30%くらいまで)、石けんが生成するにつれ、油脂とアルカリが生成石けんに溶解あるいは吸着し(乳化)ていき、けん化率がおよそ30%くらいになると、反応は一転加速度的に昂進し、第2段階に入ります。乳化によって接触面が劇的に増殖するためです。

 第2段階のこの幾何級数的な昂進速度は、そのままけん化率90%くらいまで維持されますが、けん化速度恒数というけん化の容易難易は、この段階で決まり、その速度は油脂ごとに異なります。
 第3段階はけん化率90%くらいになった時点で、反応物質が希薄化するために、反応そのものが急激に停滞します。ここから残の10%の処理速度は、第1段階よりさらに遅く、わずかづつけん化を継続しながら、けん化終了まで(これも油脂ごとに異なる)相応の時間をついやします。

 けん化速度の比較上の軌跡ですから、実際は、窯焚けん化法(熱製法)では短時間に終了するために、そう問題になりません。熱製法より時間を要する冷製法でははっきりと差異がでて、通常反応容器中では終了せず、容器からとりだし枠中に静置した後、油脂ごとに異なる中庸または長大ない日時を費やします。

 こうして静置中にけん化が終了するプロセスを、とくに「後けん化」といって区別しています。
 また油脂の組成による独自性のほか、けん化速度の影響をおよぼす条件がいくつかあります。

 まず油脂にわずかでもモノグリセライド・ジグリセライドが存在するとけん化が容易になり、酸化による遊離脂肪酸が存在しても、けん化速度は速くなります。さらに攪袢・温度・アルカリ濃度・塩・アルコールの有無もけん化速度にかなりの影響をあたえます。
 けん化速度に影響しませんが、トリグリセライドには、3価のすべてが単一の脂肪酸のもの(トリパルミチンなど)、2価が同一で1価が異なる脂肪酸のもの(ジオレオパルミチン=オレイン酸2価とパルミチン酸1価など)があります。組合せは多岐にわたりますが、通常、分類として、脂肪酸を飽和脂肪酸Sと不飽和脂肪酸Uの組合せから、SSS、SSU、SUS、SUU,USU、UUUという6つのタイプに分けられています。

 脂肪酸組成にともなう、1義的なグリセライドのけん化速度は調べられたことがあり、以下のようなデータが残っています。

グリセライドのけん化速度恒数 (McBain Kawakami J.Phys.Chem., 1930) ------------------------------------------ トリカプリン(C10)-------------31.00 α−モノパルミチン(C14)------- 29.90 α−ジパルミチン(C14)--------- 26.00 トリパルミチン(C14)-----------21.33 トリステアリン(C16)----------- 6.05 トリラウリン(C12)------------- 3.72 トリオレイン(C18:1)---------- 0.54 ----------------------------------------- 基準:タロー(牛脂)の速度恒数1.0前後

 とくに中鎖脂肪酸(C8・C10)の速度恒数は大きく、また飽和脂肪酸のパルミチン酸(C16)の速度恒数も特筆すべき大きさであることがわかっています。その延長線上に油脂の脂肪酸組成の差違による影響があります。もっともけん化速度に影響を与えるのは、C8カプロン酸、C10カプリン酸、C16パルミチン酸等を多量にふくむ油脂にほかなりません。

油脂のけん化速度(McBain Kawakami J.Phys.Chem., 1930) -----------------------------------------------------------------   規格酸価(JAS・薬局方)  調査酸価 融点℃(平均)けん化速度恒数 ----------------------------------------------------------------- ヒマシ油    1.5   *なし(中和) -11.5      36.70 ヤシ油     0.2   *なし(中和)  24       4.56 バター(牛酪脂) - *なし(中和) 34 4.23 ラード(豚脂) 2.0 *なし(中和) 38 1.95 ゴマ油    0.2 1.37 -4.5 1.66 パーム核油 0.2 *なし(中和) 27.5 1.30 ヘンプ油 - 0.7 -27.5 1.30 タロー(牛脂) 2.0 *なし(中和) 42.5 1.22 アマニ油 - 1.72 -22.5 1.05 エゴマ油 - 1.88 -4.5 0.69 綿実油 0.5 0.19 -1 0.64 パーム油 0.2 *なし(中和) 38.5 0.62 ダイズ油 0.2 0.13 -7.5 0.40 オリーブ油 1.0 0.75 3 0.21 --------------------------------------------------------------

 ヤシ(ココヤシ)油はココナツオイル、パーム(アブラヤシ)油はオイルパームオイル、パーム核油は(ココナツオイル類似)のパームの核部分のオイル、ヘンプ(大麻)油は麻実油、アマニ(亜麻仁)油はリネン実油=リンシードオイル、エゴマ油はシソ科の荏(エ)の油、英名perilla oil(ペリラオイル)はシソ(紫蘇)の意味で、現在シソ油の名称で市場に出ているものはすべてエゴマ油です。古来から日本の灯油・防水・食用に供されてきました。

 水酸基をもつリシノール酸含有量が高いヒマシ油は特例ですが、ヤシ油・バター(牛酪脂)・ラード(豚脂)・タロー(牛脂)などの高いけん化速度は、下記のとおり、脂肪酸組成に由来します。最高値のヤシ油と最低値のオリーブ油のけん化速度の落差は、およそ21.7倍におよびます。

* 4-2.脂肪酸組成とけん化影響要素(温度・濃度など)

油脂の脂肪酸組成表(数値は%) ------------------------------------------------------------------------ --------カプ-カプ-カプ---ラウ---ミリス-パルミ-ステア-オレ---リノ--リノ --------ロン-リル-リン---リン---チン---チン---リン---イン---ール--レン ---------酸---酸---酸-----酸-----酸-----酸------酸----酸-----酸----酸 ======================================================================== 炭素数---6----8----10-----12-----14-----16----18----18:1----18:2----18:3 ======================================================================== ヒマシ油--------------------------------1.0---0.7-----3.1-----4.4----0.9 ------------(リシノレイン酸)-------------------------89.6--------------- ======================================================================== ヤシ油---0.4-7.7---6.2---47.0----18.0---9.5---2.9-----6.9-----0.2------- ------------------------------------------------------------------------ バター---2.2-1.4---3.3----3.5----12.9--32.5--11.6----25.0-----0.5------- ---(C4)2.0(酪酸)-------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------ ラード(豚脂)ー-------------------14.0--23.8--15.7----39.4----12.8----1.4 ------------------------------------------------------------------------ パーム核油-0.1-3.6---3.5---47.3----16.4---9.1---2.3----16.8------0.3------ ------------------------------------------------------------------------ ヘンプ油--------------------------------6.0---1.7-----6.0-----70.0--15.0 ------------------------------------------------------------------------ アマニ油--------------------------------6.6---2.9----14.5-----15.4--60.6 ------------------------------------------------------------------------ エゴマ油--------------------------------7.0---2.0----13.0-----14.0--64.0 ------------------------------------------------------------------------ タロー(牛脂)----------------------4.1--31.0--18.2----41.2-----3.3-------- ------------------------------------------------------------------------ 綿実油----------------------------0.7--20.7---2.4----18.9----56.5-------- ------------------------------------------------------------------------- パーム油------------------0.2-----1.1--43.1---4.0----40.7-----9.7-------- ------------------------------------------------------------------------ ダイズ油-------------------------------10.4---4.0----23.5----53.5-----8.3 ------------------------------------------------------------------------- ゴマ油----------------------------------8.8---5.3----39.2----45.8-----0.1 ------------------------------------------------------------------------- オリーブ油-----------------------------10.4---3.2----73.8----11.1-----0.4 ========================================================================

 うちヤシ油とバターとパーム核油には、炭素数4「C4」から炭素数10「C10」までの中鎖脂肪酸が7%から14%相当含まれています。これらは、石けん油脂としては20%平均(15%〜30%)くらいに止めるという不文律が、かねてからあります。C10以下の中鎖脂肪酸が、皮膚にわずかな乾燥・刺激をあたえるといわれているためです。旧来からの伝統的化粧用石けんは、多く牛脂80%+ヤシ油20%がスタンダードでした。石けんの黄金比率と呼ばれたものです。

 一方で中鎖脂肪酸石けんは、かえがたいゆたかな泡立ちがあり、これまで石けんの主役から外れたことがありません。ほとんどがヤシ油石けんという石けんも世界の各地でポピュラーです。硬水につよく海水石けんともいわれています。

 さて、けん化理論におけるもっとも重要なポイントは以上の「けん化速度」ですが、以外にけん化速度に影響をあたえる要素は、攪拌、温度、アルカリ量、アルカリ濃度、遊離脂肪酸(油脂酸度)と、けん化促進のための添加物(アルコール、塩)があります。

 温度は10℃上げるとけん化速度は1.5倍になるといわれています。たとえばヤシ油の場合では、25℃を45℃へ上げると3倍速くなります。溶解度が大きな油脂(液脂=植物油)は、45℃くらいが臨界温度で、それ以上はかえって後退します。
 動物脂など飽和脂肪酸(ステアリン酸・パルミチン酸・ミリスチン酸・ラウリン酸)の多い場合は、加温(60-70℃)から加熱(沸点100℃)までが可能で、たとえば45℃から70℃へ上げると、10倍ほど速くなります(理論上は7.5倍)。

 アルカリ量は、油脂けん化に対する当量(けん化価量)より過剰にすればするほど、その分けん化速度を速めます。あとで塩析を施す場合は過剰でもかまいませんが、焚込石けん・冷製法(コールドプロセス)石けんでは、わずかな過剰または当量に止め、あるいはあえて過少にすることが通例です。

 アルカリ濃度の方は、油脂によって異なりますが、概して濃厚がよく、30%濃度くらいが臨界濃度になります。けん化速度が希薄溶液より上がります。

 遊離脂肪酸は石けんづくりに有利にはたらきます。酸化遊離するものとしては、自然の変質によるものと廃油のように劣化したものがありますが、どちらもけん化速度は向上します。ラード(豚脂)の酸度5.50という高いスコアのものは、けん化速度恒数20.0という、特異なデータもあるくらいです。脂肪酸でなく、あらかじめよそから石けんそのものを持ち込んで添加してみるのもけん化速度上有効です。

 アルコールは、エタノールを油脂に対して10%くらい(臨界濃度)添加することでけん化速度が向上します。塩類(塩化ナトリウム・塩化カリウム)は、油脂に対して2%くらいで有効ですが、4-6%くらいになるとかえってけん化を妨げ、8%くらいで再びもどり、10-18%くらいで最大の効果を生みますが、効率的という点では2%レベルで十分でしょう。

 ちなみに塩(塩化ナトリウム・塩化カリウム)は、窯中で粘度が上がりすぎたときに、これを抑える役割をもち、製法上でも有用です。  以上がけん化の理論ですが、実際の操作のなかでは、さきのように、油脂・アルカリ全量の30%くらいまでは緩和なけん化、30〜90%までは急激なけん化、90%以上は、再び緩やかなけん化になります。冷製法の後けん化といわれるのは、この90%以上のけん化が、釜から外の枠内で行われることになるからです。

 油脂・アルカリの量が、絶対的に希薄になるためですが、それは油脂とアルカリが当量(どちらも残量10%)か、アルカリ過剰な場合のことで、油脂が過剰な場合は、アルカリ残量がおよそ10%になった時点で、同様に反応緩和へ転じます。けん化の主役を演じているのはあくまでもアルカリです。

 ちなみに現在の日本のハンドメイドの石けんは、ディスカウント(当量から10%前後アルカリを抑制する)という過多過脂肪石けんがポピュラーですが、その場合でもディスカウントしたアルカリの90%くらいの時点(油脂の81%くらいの時点)から、けん化は緩和化することになります。油脂量に比しアルカリ量が希薄なため、通常より、後けん化に余剰の日数を費やさなければなりません。けん化速度がアルカリ量に比例するのは、この時点でも同様です。

 一方、過多過脂肪ハンドメイド石けんにトラブルが起こることがあるのは、けん化率30%から90%の間に、直接的にはこの油脂の過剰とアルカリの不足、間接的には温度・攪拌の不備などにって、石けんダマ(ゲル粒状=bunching、balling)が発生、あるいは(石けん・アルカリ・油脂等の)層分離などが起こるからです。

 すくなからず(わずかでも)そうした経緯をへると、石けんの生成量が減り、油脂ばかりでなくアルカリも残留することがあります。乾燥中に石けんの表面に生ずることがある白い粉は、とくにアルカリ残留が約3%を超えた場合に、表面に析出して空気中のCO2と反応生成する、無水炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ=ソーダ灰)です。

 これは削りとれば問題はありません(皮膚にはよくありません)。かねてから風化・結霜といわれている現象で、冷製法の当量(ディスカウントしない)の油脂・アルカリ処方の場合は、割とよく起こる現象です。
 また過多過脂肪石けんの場合は、基本的に油脂が過剰ですから、乾燥時とくに湿潤大気中では、石けん表面がうるおい、あるいは水滴を生じます。これは発汗sweatingという現象です。冷製法の場合全量が含まれるグリセリンも吸湿性をもちますが、こちらは通常、乾燥大気中では石けんの内部に、湿潤大気中では外部に、ゆっくりと移動することが知られています。湿潤大気中では副次的に発汗の原因になりますが、発汗の主体はあくまで過剰油脂の方です。

 発汗によって生じた水分は、石けんをただちに加水分解して遊離脂肪酸を生成、放置すると酸敗の前駆となることもありますから、こまめに拭きとっておくことが必要です。

* 4-3.水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)のスタンダード(取扱い)

 化学物質のなかには、使用の不可避な日用品がいくつもあります。その時、国際化学物質安全性カードが選択の第1資料になります。水酸化ナトリウムの取扱もその1つで、標準的な取扱い方があります。以下のように「グローバルスタンダード(世界標準)」という考え方でつくられています。

 国際化学物質安全性カードICSCは、WHO(世界保険機構)・UNEP(国連環境計画)・ILO(国際労働機関)が、共同事業として進めているIPCS(国際化学物質安全性計画)の具体プロジェクトです。化学工場の労働者・化学の専門外の人を対象に、化学物質の性質・毒性を過不足なく伝え、被害を防止することを目的に作成されています。各国の専門家がそれぞれ分担してつくる原案を、年2回、「原案検討会議」に持ち寄って決定、現在1200以上のカードが作成・公表されています(http//www.nihs.go.jp/ICSC)。過去データの更新も5年をめどにみなおされます。

 参考までに附しておきますが、利用にあたっては、原則として原データ (http//www.nihs.go.jp/ICSC)にあたってください。そういう習慣も必要です。

国際化学物質安全性カードICSC「水酸化ナトリウム」 -------------------------------------------------------------------- 水酸化ナトリウム SODIUM HYDROXIDE Caustic soda Sodium hydrate Soda lye NaOH 分子量:40.0 CAS登録番号:1310-73-2 RTECS番号:WB4900000 ICSC番号:0360 国連番号:1823 EC番号:011-002-00-6 ---------------------------------------------------------------------- [物性] 沸点:1390℃ 融点:318℃ 密度:2.1 g/cm3 水への溶解度:109 g/100 ml(20℃) ----------------------------------------------------------------------- [重要データ] 物理的状態;外観 ・無臭、白色の様々な形状の潮解性固体 物理的危険性 化学的危険性 ・強塩基であり、酸と激しく反応し、湿った空気中で亜鉛、アルミニウム、 スズ、鉛などの金属に対して腐食性を示し、引火性/爆発性気体(水素 [ICSC番号0001])を生成する。 ・アンモニウム塩と反応してアンモニアを生成し、火災の危険をもたら す。 ・ある種のプラスチック、ゴム、被膜剤を侵す。 ・空気から二酸化炭素と水を急速に吸収する。 ・湿気や水に接触すると、熱を発生する。 許容濃度 ・TLV:2 mg/m3(天井値) (ACGIH 2001) [ 1] 暴露経路 ・体内への吸収経路:エーロゾルの吸入、経口摂取。 吸入の危険性 ・20℃ではほとんど気化しない;しかし、浮遊粒子が急速に有害濃度に 達することがある。 短期暴露影響 ・腐食性。 ・眼、皮膚、気道に対して強い腐食性を示す。 ・経口摂取すると、腐食性を示す。 ・このエーロゾルを吸入すると、肺水腫を起こすことがある(「注」参照)。 長期または反復暴露影響 ・反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を起こすことがある。 環境への影響 ・環境に有害な場合がある;水生生物への影響に特に注意すること。 ------------------------------------------------------------ 一次災害 ・不燃性。 ・水分や水に接触すると、可燃性物質の発火に十分な熱を発生する。 予防 消火薬剤 ・周辺の火災時:全ての消火薬剤の使用可。 ------------------------------------------------------------ [爆発] 一次災害 予防 応急処置 ------------------------------------------------------------- [身体への暴露] 急性の有害性/症状 予防 ・あらゆる接触を避ける! 応急処置 ・いずれの場合も医師に相談! -------------------------------------------------------------- [吸入] 急性の有害性/症状 ・腐食性。 ・灼熱感、咽頭痛、咳、息苦しさ、息切れ。 ・症状は遅れて現われることがある。 予防 ・局所排気または呼吸用保護具。 応急処置 ・新鮮な空気、安静。 ・半座位。 ・必要な場合には人工呼吸。 ・医療機関に連絡する。 ------------------------------------------------------------ [皮膚] 急性の有害性/症状 ・腐食性。 ・発赤、痛み、重度の皮膚熱傷、水疱。 予防 ・保護手袋、保護衣。 応急処置 ・汚染された衣服を脱がせる。 ・多量の水かシャワーで皮膚を洗い流す。 ・医療機関に連絡する。 -------------------------------------------------------------- [眼] 急性の有害性/症状 ・腐食性。 ・発赤、痛み、かすみ眼、重度の熱傷。 予防 ・顔面シールド、または粉末の場合には呼吸用保護具と眼用保護具の併用。 応急処置 ・数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医師に 連れて行く。 --------------------------------------------------------------- [経口摂取] 急性の有害性/症状 ・腐食性。 ・灼熱感、腹痛、ショックまたは虚脱。 予防 ・作業中は飲食、喫煙をしない。 応急処置 ・口をすすぐ。 ・吐かせない。 ・多量の水を飲ませる。 ・医療機関に連絡する。 ----------------------------------------------------------------- ・こぼれた物質を適切な容器内に掃き入れる;湿らせてもよい場合は、粉塵を 避けるために湿らせてから掃き入れる。 ・残留分を多量の水で洗い流す。 ・(特別個人用保護具:自給式呼吸器付完全保護衣)。 ---------------------------------------------------------------- [貯蔵] ・強酸、金属類、食品や飼料から離しておく。 ・乾燥。 ・密封。 ・耐腐食性のコンクリートの床のある場所に貯蔵すること。 ----------------------------------------------------------------- [包装・表示] ・破損しない包装;破損しやすい包装のものは密閉式の破損しない容器に 入れる。 ・食品や飼料と一緒に輸送してはならない。 ------------------------------------------------------------------ [注] ・作業時のどの時点でも、許容濃度(天井値)を超えてはならない。 ・肺水腫の症状は 2〜3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保た ないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。 ・この物質中に水を注いではならない;溶解または希釈する時は必ず水の中に この物質を徐々に加えること。 ------------------------------------------------------------------

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